
今回の書籍「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治著
をおすすめする人は以下の人たちです。
- 生活で子どもと関わる機会がある
- 親として子どもの将来に関わっていく
- なぜ信じられない犯罪が起きてしまうのか気になる
本書のポイント
- 信じられない犯罪は認知機能の低さ、軽度知的障害の可能性が高い
- 認知機能が低い場合、反省を求めても無駄であり、矯正ができない
- 世の中には多くの気づかれず、忘れられている認知機能の低い少年や大人までいる
心に残った言葉
- 「褒める教育」は問題の先送りにしかならない
- 少年院の勉強は、大抵小学校低学年からスタート
- 普通の学校で困っている子どもの特徴は、少年院の非行少年と共通する
- そもそも反省もできず、葛藤すらもてない
- 犯罪者から、納税者に
- 守られなければいけない障害者が加害者になるのは「教育の敗北」
著者の紹介
宮口 幸治(みやぐち こうじ)
立命館大学産業社会学部教授。医学博士、臨床心理士。
京都大学工学部を卒業し、建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務。2016年より現職。
困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主宰。
世の中が歪んで見えてしまう子どもたち

これを見て、どう思うでしょうか?
これは、少年院にいる非行少年にケーキを3等分、5等分するよう指示した図の解答例です。
全く等分できていないのが一目でわかると思います。これは一例だけではなく、多くの少年院の非行少年が同じように等分できないことが分かっています。
これだけは小学校の低学年でもありえる話なのですが、問題なのは、強盗や殺人を犯した多くの非行少年がこのような回答をするという点です。
少年院の非行少年は認知機能が低く、知的障害に近い場合が多いのです。
ケーキを分ける事例意外にも、以下のような場面があります。
- 簡単な足し算や引き算ができない
- 感じが読めない
- 簡単な図形を写せない
- 短い文章すら復唱できない
施設ではこのような非行少年を矯正しようと、様々な活動を行います。
しかし、矯正や反省以前の問題であり、何のための活動なのか理解すらできない場合もあるのです。

表紙の図をみただけでも興味を引かれたけど、図だけじゃなかったんだ。
少年院では漢字が読めない前提といったように学力が低いことは前提が多い。
実際には、学力だけじゃなくて他の力も低いんだけどね。

だから、反省や強制の活動をしても効果が薄いのね。
少年院が社会に復帰してもらう施設だと思っていたけど、難しいのが現実なのね。

ただ、反省や強制をさせようとしても、そもそもの能力の問題なんだね。
だから、能力が不十分のまま少年院を出ても、同じように犯罪に手を染めてしまう。
再犯率が高いことにも関わりがあるのかな。
次は、認知機能の低さがどのような影響を与えているのか紹介していきます。
認知機能の弱さが全てを歪めていく
見ること、聞くこと、想像することが歪む
見たり聞いたり想像する力が弱くなり正しく捉えられない
認知機能には様々な要素が含まれます。
特に、「見る」「聞く」「想像する力」は基板になる力です。
- 見る→相手の様子、相手の表情など
- 聞く→相手の発言、声の口調など
- 想像→相手はどう思っているのか、自分の行動をどう思われるかなど
しかし、この能力が弱いと様々なことが歪んで捉えられてしまうのです。
さらに、想像する力が弱いことでそれらを補うこともできません。

事実とは違う捉え方をしてしまう、とういうことなのね。
私たちは状況に合わせて相手の言葉や行動を捉えるけど、それも難しい。
そうなると、非行や犯罪に走ってしまう気持ちも少し理解できるかも。

本人たちに悪意がなくても、そのような捉えになってしまう可能性があるんだね。
眼鏡の度数が合ってないように、彼らには世の中のすべてが歪んで見えてしまう。
自分たちと同じように捉えることができないから、信じられない事もあるのかな。
適切な選択をすることができない
思いつきの行動で、非常識な行動をしてしまう
例えば、ある非行少年があいさつを返してもらえなかったとします。
通常でしたら、様々な選択肢が考えられます。
「声が小さかったのか」「相手の気分が悪かったのか」「嫌われているのか」
相手を正しく「見る」「聞く」「想像する」ことができれば、様々な選択肢を考えたうえで、最も適切な選択肢を選ぶことができると考えられます。
しかし、認知機能が弱いと「自分は嫌われている」という選択肢に絞られてしまうことがあります。
この認知機能の弱さは被害者の気持ち、自分の行動で起きるだろう自体も想像できません。
そのため、強盗や殺人などの凶悪犯罪を直感的に選んでしまうのです。
そのような非行少年に矯正や反省のみを試みることに効果は無いのです。

普通の人でも難しいことだよね。
「人の気持ちを考える」という一言は、簡単そうで非常に難しい。
認知能力が低いと、より考えることができなくなってしまうんだ。

何気ない一言が、敵意や恨みに捉えられてしまうのね。
確かに、普通の人でも難しいから、より敏感に反応してしまうのかしら。

色々な選択肢を考えることができないことが大きな原因なんだ。
1つに思い込んでしまうと、普通は起こさない行動をとってしまう。
すぐに行動を起こしてしまう事も認知能力が関わっているんだね。
対人スキルが乏しくなる
嫌なことを断れず、助けを求めることもできない
認知機能の視点から捉えなおします。
- 見る→相手の表情やしぐさが読めず、不適切な発言や行動をしてしまう
- 聞く→友達が何を話しているのか分からず、話についていけない
- 想像→相手の立場や気持ちが想像できず、不快にさせてしまう
そのような対人関係の難しさがいじめやストレスにつながってしまいます。
また、自分の居場所を作るうえで、わざとふざけてしまい、結果的に非行へ繋がる場合もあります。
結果として、対人関係を上手に作ることが難しいとされています。

相手の言葉や表情が正しく捉えられないと、コミュニケーションも難しいわよね。
まあ、これも普通の人でさえ正しく行うことは難しいことだけど。

もちろん、感情をコントロールする力も足りないんだろうけど。
それでも、この悪循環から抜け出すのは難しそうね。
自己評価が不適切になってしまう
自分の問題が分からず、過度に自信があったり、なかったりする
少年院では自己評価ができていない例が以下のようにあります。
- 自分のことは棚に上げて、他人の欠点ばかり指摘する
- どんなにひどい犯罪をしていても自分は優しいと思っている
- 極端に自分に対して自身が無い
これらの原因は、適切な人間関係を築けなかったことが上げられます。
自分のことは、自分1人で理解することはできません。周囲と比較したり、周囲と関わったりすることで少しずつ自分を正しく理解できるようになります。
しかし、認知機能の低い少年たちでは適切に人間関係を築くことが難しいです。
そのような状況で自分を正しく理解し、評価することは困難であり、自分がなぜ問題とされているのか理解することも困難にしてしまうのです。

他人と関わることでしか、自分がどんな人かは分からないんだね。
適切に他人と関わることができないと、自分も歪んで見えてしまうんだ。

周りが歪んで見えてしまうことで、自分も歪んでしまうのね。
犯罪を犯してしまう少年を正しいとまでは言えないけど、一概に悪いとも言いづらいわね。
彼らの努力だけでどうにかなる問題ばかりじゃないことがよく分かったわ。

そうなんだよね。読んでても、なんか切ないというか、やるせない気持ちになったよ。
次は、学校や少年院から少し広げて、社会全般を見ていくよ。
学校を卒業した後も、認知能力が十分高まらないと、苦労する場面が多いんだ。
気づかれず、忘れられてしまう少年たち
14%は軽度知的障害の疑いなのに気づかれない
1クラス36人中、約5人は軽度知的障害の可能性がある
以前はIQ(知能指数)85以下が知的障害として診断されてしまいました。
しかし、それではあまりにも多くなってしまうことから、現在では70以下とされています。
問題は、この70~84の間の子どもたちです。
診断としては問題ないかもしれませんが、状態として軽度知的障害なのです。
そのため、診断名はないまま、「だらしがない」「勉強できない」「気持ちの制御ができない」とされて生活を送り続けてしまいます。
学校生活の中のみのでは良いかもしれませんが、大人になってからはより生きづらくなります。
病名がつかないだけで、誰からも気づいてもらえず、助けてもらえない状況があるのです。

身体障害者は、目に見えて分かるから助けて上げやすいけど。
これで病名が無かったら、正直、だらしないとか怒りっぽいと思ってしまうわ。

おすぎもそう思う。
実際、「この人、少し変わっているな」って思う場面はいくらでもあるし。
本人が苦しんでいるかどうかもなかなか気づけないし。

14%っていう数字だと、なかには職場にもそういう人がいるのかもね。
それでも、問題なく業務が進んでいるように見えると、気づくのって難しいわね。

この後も紹介するけど、気づかれないことで助けてもらえず、苦しむ状況もあるんだ。
きっと、身の回りにいてもおかしくない割合なんだけど、はっきりと気づくことは難しい。
だからこそ、気づかれずに大人になってしまい、大人になっても気づかれない状況があるんだね。
知的なハンディは見えづらく、忘れられてしまう
社会的には普通の人と区別が分かりづらい
知的障害と診断されたならまだしも、IQ70~84の人たちは普通の人と区別がつきません。
中には、認知機能が弱いだけで、学力には問題が無い人も多いです。
しかし、普通の人と区別が分かりづらいだけでなく、彼らを苦しめるものもあります。
- 所得が少なく、貧困率が高い
- 栄養不足、肥満率が高い
- 孤独になりやすい
- 運転免許証の取得が難しい
このように苦しみを抱き、結果的に非行へ走ってしまう少年や大人になることがあります。
周囲が気づき、支援することができれば変わった可能性もあるかもしれませんが、現在の状況では分かりづらく、支援もしづらいのが現状です。

対人関係だけじゃなくて、就く仕事にも影響するのね。
きっと、この状況で助けがないと、ものすごいストレスになるのよね。

そのストレスが、非行や犯罪にはしってしまうこともしばしばあるんだ。
有名な凶悪事件では、事件後に知的障害があったことが分かった事例もある。
周りが気づけていたらって思ってしまうけど、難しいよね。
まとめと感想

今回は非行少年と認知機能についてまとめました!
非行少年は人格の問題とばかり思い込んでいたけど、認知機能が深くかかわっている。
彼らに深く反省や強制を施すことばかりが、社会復帰の手段ではないんだね。

現実はよく分かったけど、結局、どうしたらいいの?
施設や教育で何かしていくべきだとは思うけど。

本書では、認知機能を高めるトレーニングの必要性を紹介しているよ。
ただ、詳しい方法は著者が別の書籍で紹介しているので、またの機会に。
主張としては、学校や施設で認知機能を高めることを実践すること。
あとは、保護者や学校が気づいて上げれることが上げられているかな。

まあ、そうよね。
家庭環境や教育環境によることも多いだろうし。
義務教育の学校も分かるし、親としても気づいてあげたいわね。
私としては、社会で受け入れる体制が整うといいんだけど。

個人的に、「教育の敗北」という言葉がズキっときたかな。
将来を担う資質・能力を持った優秀な子どもを育てることはもちろんだと思う。
けど、しっかりと生きていくスキルに長けた子どもも育てたい。
学校に全てを投げてしまうことには反対だけど、学校だからできることも多いのかな。

学校向けの取り組みとして「コグトレ」なのね。
5分なら、確かにできそうかしら。

大人の「コグトレ」もあるみたいだね。
是非、気になった人はチェックしてみてください!
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