【「未来」湊かなえ】悲しみの先にある輝かしい未来を信じて【ネタバレ感想】

小説
おすぎ
おすぎ

今回の小説「未来」湊かなえ

はこんなお話しです!

  • ドロドロとした不運や不幸が多い
  • 物語の登場人物がつながり始める
  • 絶望の中にかすかな希望がある

著者の紹介

湊 かなえ(みなと かなえ)

1973(昭和48)年、広島県生まれ。

2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。

翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。

他の著書に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などがある。

あらすじ(ネタバレ無し)

主人公である章子は10歳。

人のように元気のある時と人形のように動かなくなる母、優しくて賢い父に囲まれながら幸せな生活を送っていた。

しかし、病気で父が亡くなった。

悲しみに暮れる中で一通の手紙が届いた。

「こんにちわ、章子。私は20年後のあなた、30歳の章子です。」

その手紙の中には、家族しか知らない内容、未来は自分は幸せだということが綴られていた。

その未来に向けて10歳の章子も30歳の章子へ手紙を書き、15歳に至る。

しかし、手紙の内容のような幸せに近づいているのか、疑問が残る。

彼女を待つ未来とは―――

深読みポイント

居場所のない子どもたち

本書では複数の子どもが登場します。

表面上は問題がなさそうな登場人物の少女たち。

物語が進むにつれて、それぞれが家庭環境に問題を抱えていることが分かってきます。

貧困、虐待、性的暴行、売春、ネグレクト―――

親を頼れず、教師を頼れず、大人に頼れず。

そんな彼女たちの気持ちと行動が物語を進めていく鍵となります。

おすぎ
おすぎ

最初は章子だけが不幸だと思っていたけど、そうでもないみたい。

色々な登場人物の背景には様々な問題が抱えられていました。

きっと、現実世界でも珍しくないんだろうね。

およこ
およこ

つらい環境で育ってしまえば、私たちが普通と思っている考えや行動になるとは限らないわよね。

大人だろうと、子どもだろうと、少しずつ世間とずれてしまうのね。

断ち切ることが難しい負の連鎖

貧困や虐待といった行動は子どもの一時期だけでなく、その後にまで大きい影響を与えます。

一度狂い始めた歯車が自動的には整わないように、家族や周囲まで狂い始めます。

小さなきっかけが、その後の大きな破滅へと繋がっていることも。

様々な問題が物語中にはありますが、それぞれの問題が物語の根幹に繋がっています。

どこかで、誰かが断ち切らない限り、この負の連鎖は止まらないのかもしれません。

おすぎ
おすぎ

格差が社会問題として上がるけど、縮めることは難しいみたい。

1回できた格差は世代を超えて、引き継がれてしまうんだ。

およこ
およこ

貧しい家庭で育った子が、身体や知能に遅れが出てしまうのね。

身体や知能に留まればいいけど、犯罪につながることもあるし。

感想(ネタバレ無し)

物語の前半は、ひたすら章子からの手紙でした。

10歳から15歳まで、起きたことを手紙形式で綴っています。

手紙と手紙の時間が経っている事から、いきなり物事が展開していて驚く場面もありました。

手紙の内容が絶望的な事なら、尚更。

章子だけでなく、登場人物にはそれぞれ悲しい過去、苦しい過去があり、胸が苦しくなる場面が多かったです。なぜそうなってしまったのか、こうすればよかったのに、と。

大人がもっとしっかりしていれば、社会がしっかりとしていれば、きっとこのようなことにはならなかったのかもしれません。

しかし、救えるのもきっと大人や社会なのです。

この先の未来が輝かしいものになるためにも、私たちにできることを考えていきたいです。

おすぎ
おすぎ

読んでいると、酷いと感じる出来事があります。それも、大人の都合で。

勝手なことをして子どもを不幸にするのは大人です。

ただ、同じように、子どもを助けることができるのも大人。

小さくても助けになれるような大人、親になりたいね。

およこ
およこ

子どもを見ると、少し考えてしまう内容ね。

家庭のことが多いから、踏み入れない部分も多いとは思うけど。

大人や社会が、子どもの未来を守っていけるといいわね。

おすぎ
おすぎ

ここから先はネタバレ有の感想になるので、読んでいない方は注意!

【注意】ネタバレ感想

大人が与えた、子どもへの負の連鎖

物語の登場人物を振り返ってみると、多くが家庭で問題を抱えていました。

  • 章子 →鬱のような母、父の病死
  • 亜里沙→父の虐待、母の病死
  • 実里 →ヒステリックな母、不倫する父
  • 智恵理→性的虐待をする父、階段から突き落とし流産させる母
  • 真唯子→育児放棄する母
  • 林  →母の病死(学生時代)

また、問題の一端となる早坂や亜里沙の父も少年院に入っていることから、幼い時期に問題を抱えていたのではないかと想像できます。

多くの登場人物が心に傷を負っています。それが原因の一端となって多くの事件や事故が起きてしまいます。

さらには、事件が事件を呼び、不幸が不幸を呼びます。まさに、負の連鎖です。

実際、現実でも格差は広がる一方であり、縮まることは非常に難しいことが明らかになっています。

そこには、金銭面だけでなく、親からの愛情不足により認知的に劣ってしまうことも挙げられます。

作中の亜里沙は経済的にも、家族愛にも恵まれなかったことから低学力であり、いじめの対象とされてしまっていました。

加害者として描かれている実里も、実際に考えてみると被害者の1人だったのでしょう。親の不倫を確信していたかどうかは不安ですが、ヒステリックな母から間違った愛情を受けてしまう限りには他人と適切な人間関係を築けるとは考えにくいです。(章子や亜里沙からは病気と言われていますが...)

大人や家族が暖かく、適切な関係を築けていれば、立て直すことも可能だったとは思いますが、家庭や学校に居場所が無い限り、この連鎖を断ち切るのは非常に困難なのでしょう。

おすぎ
おすぎ

物語の展開は希望がありそうだと思っても、すぐに転落。

ドロドロした展開が続いていて自分の気持ちも落ち込んじゃった。

特別な不幸に感じちゃうけど、実際、身近な問題なのかもね。

およこ
およこ

登場人物のほとんどが問題を持っているのね。

ここには出てこない登場人物も含めて、ろくな人がいないわね。

おすぎ
おすぎ

そうだね。笑いごとじゃないくらい。

結果、お父さんもお母さんも隠し事を抱えていたわけだし。

一個の負を断ち切るには、大きな支援が必要なんだろうなあ。

親の責任じゃなくて、社会全体としてね。

連鎖を断ち切り、明るい未来を見せるのも大人

大人の身勝手が子どもの未来を阻んでしまう。

しかし、明るい未来を見せることができるのも大人しかいないのです。

作中では真唯子(篠宮先生)がその役割を果たそうとしていました。

ただ、真唯子も平穏な暮らしができていたわけではありません。

真唯子は母から育児放棄をされるも、祖母が非常に面倒を良くみてくれました。そのため、問題なく過ごすことができていたかのように見えました。

しかし、祖母の死後、母親から偽の税理士と一緒に祖母が残してくれた財産を取り立てられます。支払う必要はないというのに。結果として、体を売って学費を稼ぐも、将来に絶望する結果となりました。

そんな状況でも、真唯子は未来に希望を見出します。

教師として、大人として、章子や亜里沙に輝かしい未来を見せようとして手紙を書きます。

ここで、負の連鎖が断ち切られるきっかけとなりました。

物語は章子と亜里沙が助けを求めようとしたところで終わってしまいますが、きっと、作中の他の登場人物とは違う、少しでも明るい未来になったのではないでしょうか。

もし、真唯子が将来に絶望し、そのまま自殺をしていたら―――

きっと、章子も亜里沙も、このような結末にはならなかったのでしょう。

手紙を出すと言う行為自体はおせっかいかもしれません。未来からの手紙なんて、信じるに値しないものかもしれません。

そんな行為が、彼女たちの運命を変えたのです。

わたしたちのほんの少しの行動が、助けを求める子どもたちを救えるかもしれません。

そんな社会問題を背景に、特別な出来事ではない、リアリティのある1冊だと感じました。

おすぎ
おすぎ

真唯子先生、本当に挫けなくてよかった。

彼女がいなかったら章子たちの未来はきっと、より暗いものになっていたね。

およこ
およこ

大人にも責任はあるだろうけど、社会の在り方もそうなのよね。

様々なところで苦しまないような世界になってほしいわね。

願ってばかりでも駄目なんでしょうけど。

おすぎ
おすぎ

慈善団体みたいな大規模なことだけじゃなくて、小さなきっかけでもいいよね。

1人の大人として、何かしらの居場所を作ってあげれたらいいな。

同時に、恵まれて大人になれたことには感謝。親や環境には感謝しながら自分にできることをやっていきたいね。

コメント

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