【「流浪の月」凪良ゆう】偏見から歪んだ真実、認められない関係の行方は?【ネタバレ感想】

小説
おすぎ
おすぎ

今回の小説「流浪の月」凪良ゆう

はこんなお話しです。

  • 世間の常識と自分の常識の違いが描かれている
  • 一般的な男女関係とは異なる愛(?)と新しい人間関係
  • 周囲が思う事実と、当事者だけが知る真実がずれている

著者の紹介

凪良 ゆう(なぎら ゆう)

2007年に本格的デビュー。以降、各社でBL作品を精力的に刊行し、デビュー10周年を迎えた17年には初の非BL作品『神さまのビオトープ』を発表、作風を広げた。

巧みな人物造形や展開の妙、そして心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派である。ボーイズラブを10年以上書き続ける一方で、ボーイズラブ以外の作品も執筆している。一貫しているのは「どこまでも世間と相いれない人たち」を書いてきた。

一般文芸における初単行本『流浪の月』で2020年本屋大賞を受賞。

おもな著作に『未完成』『真夜中クロニクル』『365+1』『おやすみなさい、また明日』『美しい彼』『わたしの美しい庭』『滅びの前のシャングリラ』などがある。

あらすじ(ネタバレ無し)

最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。

それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。

だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。

それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。

新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。本屋大賞受賞作。

深読みポイント

愛とは違う、2人の人間関係の行方は?

当時、小学生だった更紗は父と母に囲まれて幸せに暮らしていました。

しかし、両親がいなくなってから幸せな時間が一転します。

ご飯の時間にアイスクリームを食べたり、ランドセルがなかったりするなど、少し変わった生活をしていたため、周囲と馴染むことができないのです。

預けられた家でも同じようになり、居場所が無くなっていきます。

そこで出会ったのが文という大学生でした。

公園で少女を眺める姿を、同級生はロリコンと噂していましたが、優しく傘を差し伸べてくれた文についていき、共に生活を始めるのでした。

悪い噂とは裏腹に、2人で幸せな暮らしをしていきます。

その後、突如引き離される展開になりますが、その後もお互いを求める姿からは男女関係を超えた、新しい人間関係を考えさせるでしょう。

およこ
およこ

普通に考えると、事件になってもおかしくない状況よね。

おすぎ
おすぎ

更紗が文に救いを求めただけじゃなくて、文にも何か理由があるんだね。

およこ
およこ

普通に考えると、引き離したくなっちゃう状況よね。

小学生と大学生にもなると。

おすぎ
おすぎ

その「普通」っていうところがポイント。

彼らの抱えている葛藤に注目!

周囲が思う事実と、2人だけが知る真実

周囲は文のことをロリコンと噂し、危険だと考えていました。

ただ、実際の文は更紗に対して、肉体関係や性的暴行を加えることは一切ありません。

それどころか、更紗のお願いを聞いて、幸せな暮らしに協力してくれます。

しかし、更紗が行方不明と分かって時間が経つと、文は誘拐犯として捕まってしまいます。

15年過ぎ去った後でも、偏見の目が消えることはありません。

周囲が抱く文への考えと、2人だけが知る真実。文が抱える悩みにも注目です。

およこ
およこ

その状況だけ見たら誘拐にしか見えないわよ。

おすぎ
おすぎ

お互いの話が聞けていれば、そうはならなかったかもしれないんだけどね。

周りから見た状況と偏見が、真実を歪めてしまっているんだ。

およこ
およこ

まあ、ここまで読んでいるとそれは分かるけど。

じゃあ、なんで文は家へ連れて行ったのかしら?

おすぎ
おすぎ

そこからが物語のキーポイント!

ネタバレになるから後半にとっておきます!

感想(ネタバレ無し)

「ロリコン」と聞いて自分も偏見を持ちながら物語を読んでいました。

ただ、実際の文は更紗に対して手を出すようなことは決してありません。

更紗自身は「自分はタイプじゃないから」と考えていましたが、次第にその理由も明らかになっていきます。

序盤は更紗の視点で物語が描かれますが、後半になって文の視点から描かれる時、今までの物語の見方がガラッと変わるはずです。

その先にある、愛とは違う、新しい人間関係をあなたはどう捉えますか?(人によっては気持ち悪く感じる人もいるそうですが…)

誘拐として扱われる事実は間違いないのですが、そこにある真実は全く別物。

自分の生活でも、そのようなことがきっとあるのではないかと思いました。

およこ
およこ

色々な事件やニュースも、裏側には色々な事情があるものね。

全てを捉えるっていうのは難しいところだけれど。

おすぎ
おすぎ

そうなんだよねー。

「~だから、~してしまうはずだ」っていう思い込みは消えずらい。

危ないから、不安だからって親切だと思うことも、差別に近くなるのかもしれない。

そう考えると、人と人が上手に付き合うっていうのは本当に難しいことなんだね。

およこ
およこ

この先はネタバレ感想になります!

物語のカギを握る文の秘密もあるので、読んでない人は注意してください!

【注意】ネタバレ感想

周りから理解されなくても、一緒にいたい

誘拐した犯罪者として扱われる文、その被害者とされる更紗。

この2人が一緒にいることは世間の誰もが許してくれないでしょう。

しかし、15年の時が経っても、お互いを求め合います。

文は家庭の厳しい教育や、抱えた悩みを和らげてくれる更紗を求めます。誘拐後に営業を始めた彼の喫茶店の名前は「更紗」を由来としてつけるなど、恨むことも、忘れることも無かったのです。

更紗も同じように文を忘れることなく生活します。自分のせいで文が捕まってしまったと後悔しながら、被害者として扱われながら、日常を過ごします。

お互いにパートナーと言える存在がいながらも、距離を近づけていきます。

周囲は反対し、近づけない事を善意だと思っていますが、当事者の2人からしたら迷惑。

普通の関係ではない、さらに恋愛とも違う感覚。

現代でもLGBTQといった性の多様性が問題になりますが、それとも違った問題に、認め合う事の難しさ、多様性の難しさを感じました。

2人が幸せなら、それでいい気もしますが。

およこ
およこ

世間からしたら、異常な組み合わせよね。

誘拐した加害者と被害者が仲良くするっていうのも。

おすぎ
おすぎ

周りの人も悪意なんじゃなくて、親切から反対するよね。

インターネットがある時代だから、どこにいても、いつまでも言われてしまうし。

およこ
およこ

文と更紗にいたパートナーたちも、ものすごいショックを受けそうよね。

更紗の彼氏はともかく、文の彼女はまっとうな関係を願っていたんだから。

おすぎ
おすぎ

2人が幸せなら、まあ、それでいいのかなーとは思うけどね。

少なくとも、更紗の彼氏さんよりは、幸せなのかな。

偏見の目は真実を歪んでみてしまう

文は身体の性的発達に問題がありました。

そこから、目に見えて性的発達をする女性に劣等感を抱くようになります。周囲と彼女の話をすることも、着替えて身体を見られることも恐れ、不安になる日々。

同年代の恋愛、結婚、子育て。

様々な社会のレールから外れてしまっていることに葛藤を抱き、大学受験も失敗してしまいます。

「ロリコン」のように少女を好きになってしまおうと思い立つも、実際に幼女を好きになることはできませんでした。自ら社会のレールを外れようと思い立ち、更紗を家に連れて帰るも、そのような欲求は湧きません。

ただ、そこで見た自由奔放な更紗を見たことで、文の心は大きく救われたのでした。その後、誘拐された後も更紗との日々を忘れることは無く…。

更紗も同じように、居場所が無く、死さえ選ぼうとしていた自分を助けてくれたのが文であり、大切な存在でした。そこに、被害者という意識はありません。

周囲からみた事実は、加害者と被害者。

善意として「怖かったんだよね」「辛かったら言わなくていいよ」と言って、真実がどんどん歪められてしまいます。挙句、被害者である更紗は、つらい過去を消そうと文を求めている、と専門家に捉えられてしまうほど。

「ロリコン」「被害者」といった言葉ひとつで、ここまで偏見があるように、真実が歪められてしまうのだと考えさせられる内容でした。

自分たちも言葉だけで物事を捉えてしまうことに、注意が必要だと思います。

おすぎ
おすぎ

更紗も文も、周りの人に正しい真実を言いきれなかったことも問題の1つだったけどね。

ただ、苦しい問題を人に打ち明けるっていうのも大変だから、難しいんだけど。

およこ
およこ

言ったとしても、信じてもらえるかどうかは別問題よ。

少なくとも、文に関しては大きな壁があると思うし。

おすぎ
おすぎ

まあ、そうだけど。

お互い、打ち明けられるような関係の人も、いなかったこともあるのかな。

およこ
およこ

親切も、一歩間違えると偏見を生んでしまうのね。

真実を知らなかったら、2人の関係に賛成する人は少ないでしょうし。

おすぎ
おすぎ

思いやりが、勝手な解釈になって、真実を歪ませることもあるだろうから。

世の中のニュース、ささいな事件も、きっと裏側に色々あるんだと思うよ。

コメント

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